社会(公民)解説 2018年岐阜県公立高校入試

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 大問3番は公民です。いつもの問題構成ですね。

 社会の解説をブログにあげている間に、公立高校は合格発表がありました。おかげさまで有隣塾の生徒は全員合格することができました。ただ、今年も岐阜市内の高校は大幅に定員オーバーしましたし、全員合格をつづけるのも難しくなってきていると感じています。しかし、生徒たちが第一志望に合格できるように応援していくことに変わりはありません。これからも頑張ります。

 

 さて、それでは解説をしていきましょう。

 

1. ア (ワイマール憲法の制定)

 

 第一次世界大戦後の出来事を選択する問題です。第一次世界大戦は1914年、サラエボでオーストリアの皇太子夫妻がセルビア人の青年に狙撃されるサラエボ事件をきっかけに始まりました。三国同盟側(ドイツ、オーストリア、イタリア=離脱、トルコ)と三国協商=連合国側(イギリス、フランス、ロシア)の間でヨーロッパを二分する戦争になり、長期化の一途をたどります。

 日本は日英同盟を根拠に参戦し、ドイツが中国に持っていた利権(山東省・青島)を獲得し、中国の袁世凱政権に対華21か条の要求をつきつけます。当時、ヨーロッパ諸国は中国の利権を列強で分割していましたので、日本が抜け駆けをすることには嫌悪感を持ちますが、ヨーロッパでの戦争でそれどころではない状況でした。また、アメリカは当初は参戦しませんでした。アメリカは「モンロー主義」をかかげてヨーロッパには介入しない政策だったからです。しかし、戦争終盤にドイツの潜水艦による無差別攻撃が始まると、陰からイギリスを支援していたアメリカも参戦することになります。

 途中、1917年にロシア革命がおこり、レーニン政権は交戦国を単独講和を結んで戦争から離脱するなどの変化もありましたが、1918年にドイツ国内で反乱がおこり、戦争は終結します。

 1919年にフランスでパリ講和会議が開催され、ベルサイユ条約が締結されます。そして、同じ年にドイツでワイマール憲法が制定されました。ワイマール憲法は正解で初めて社会権を規定した憲法として重要です。これはロシアの労働者革命の影響を受けてのものでした。現在では「人間らしく生きる権利=社会権」は当然の権利として規定されていますが、もちろん、私たちの不断の努力によって政府や企業に守らせるようにしていかなければならない権利です。

 それ以外の選択肢は、イ 世界人権宣言(1948)、ウ フランス人権宣言(1789)、エ 国際人権規約(1966)でした。

 

2. エ (a=能、b=京都)

 

 1番につづいて歴史分野との総合問題です。どちらで出題されてもおかしくありません。

 観阿弥・世阿弥といえば「能」です。室町幕府の3代将軍・足利義満が保護したことでも有名です。また、応仁の乱(1467~1477)後に自治を担った商工業者としては、京都、堺、博多などが有名ですが、京都の町衆が復興させたのが祇園祭ですので、bは京都になります。

 

3. ウ (リサイクル)

 

 リデュースはごみを減らす(reduce)こと、リユースはモノを捨てずに「そのまま」再利用(reuse)することです。形を変えて再度製品として利用することをリサイクル(recycle)といいます。

 リユースとリサイクルの違いについてしっかりと理解しておくことが大切です。

 かつてはこれらの「3R」が基準でしたが、現在ではこれに、リフューズ(refuse 拒否)、リペアー(repair 修理)を加えた「5R」として推進されています。

 

4. イ、エ (医療・介護、年金)

 

 表から読み取ればすぐに答えがわかる問題ですが、普通に考えても年代が高くなるほど関心が増える課題を選べば正解になります。

 

5. 二元代表制

 

 日本は国では議院内閣制を採用していますが、地方自治では二元代表制を採用しています。首長と地方議会は同等の権限を持つため、抑制と均衡が働く仕組みです。首長が独裁的に権力を行使すれば、地方議会が歯止めをかけることができますし、地方議会の第一党から首長が選出されるわけではないので、相互に抑制的な効果も期待できます。

 一方で、議院内閣制では、国会と内閣が連帯して責任を負うことになっていますが、内閣が衆議院の多数派から構成される関係上、内閣の権限が強くなりすぎると、国会軽視がひどくなる危険性があります。2017年から18年にかけても、行政側が国会に提出する文書を「改ざん」して国会審議を妨害する事件が起こりました。その間に衆議院議員総選挙も実施されているため、「改ざん」された資料に基づく国会論戦を基盤にして選挙が実施されたことになり、当選した議員や内閣の正当性にも疑問符がついてしまいます。

 二元代表制も首長の権限が強くなりすぎれば同様の問題が起こりますから、やはり権力の分散、抑制と均衡を図ることが大切です。

 

6. 衆議院の議決を国会の議決とする

 

 「衆議院の優越」に関する問題です。予算に関しては、衆議院に「予算先議権」が認められると同時に、いわゆる「30日ルール」によって、衆議院で予算案が可決された後、30日経過すれば、参議院で予算案が可決されていなくても衆議院の議決を国会の議決とすることができます。また、問題にあるように、参議院で否決され、両院協議会でも合意が得られなかった場合も衆議院の議決が優先されます。

 これだけ見ると、衆議院はかなり強い権限を有しているように見えますが、予算を執行するには「予算関連法案」の可決が必要です。こちらは普通の法案なので、衆議院の議決だけでは通過しません。参議院でも可決されるか、参議院で否決され、両院協議会でも合意が得られなかった場合は、廃案または衆議院で3分の2以上の賛成での再可決が必要になります。

 2000年代初頭の「ねじれ国会」の時代にはこうした事例が多々見受けられました。

 衆議院の優越については、他にもありますので確認しておきましょう。

 

7. ア (d=国税、e=直接税)

 

 代表的な国税は、所得税、法人税、消費税です。地方税は、住民税、事業税、固定資産税などです。

 法人税は、会社=法人が直接納めるので直接税です。間接税は消費税や酒税、たばこ税、入湯税などのように払う人と納める人が違う税です。

 

8. ウ (パソコン)

 

 グラフを見ればパソコンの寡占が最も進んでいることがわかります。

 独占は1つの企業が生産量のほぼすべてを占めている状態、寡占は数社で占めている状態です。

 

9. 男女雇用機会均等法

 

 男女平等にかかわる法律としては、1985年制定の男女雇用機会均等法と1999年制定の男女共同参画社会基本法が頻出です。区別をしっかりとつけておきましょう。

 

10. 難民

 

 説明があったので解答しやすくはなりましたが、UNHCRの正式名称だけで出題されていたら難問でした。

 難民問題はヨーロッパでは大きな問題となっており、国外から難民を受け入れることによる国内の排外主義(差別主義)の伸張がおきています。イギリス、フランス、ドイツなどでは排外主義を掲げる政党が議席を伸ばしており、オーストリアでは政権をとりました。アメリカでもトランプ大統領が誕生しています。

 日本は難民受け入れでは非常に消極的な国で国際的には非難を浴びています。難民を受け入れない日本でも排外主義が勢力を伸ばしてきていますが、なんとなく今の雰囲気なら差別的な発言をしても許されるような空気が蔓延しているような気がします。おそらく数年後にとても恥ずかしい気持ちになるのでやめましょうね。

 

11.(1)WHO (2)イ (東南アジア)

 

 世界保健機関はWHOです。Hは(Hoken)ではなく(Health=健康)です。数年前に、世界貿易機関=WTOが出題されています。過去問練習でWHOと誤答する例が目立ちましたが、しっかりと間違えていたおかげで今回は正解できていた塾生がほとんどでした。「練習で間違えるというマイナスの行為を積み重ねることが本番で正解するというプラスの行為に結び付く」これが弁証法です。

 ケニア以外はすべて東南アジアの国々です。ODAもよく出題されるので学習しておきましょう。

 

 以上で公民の解説は終了です。公民分野は過去問の演習をどれだけやっていたかが結果に反映しやすい科目ですので、しっかりと復習しておきましょう。ちなみに、有隣塾の入試前日講習で「男女雇用機会均等法」「WHO」について解説していました。

 

 さて、次は理科の解説ですね。